ISSFワールドカップ韓国参戦報告2009/4/8〜16

○はじめに
ナショナルチーム選考会によって選出されたライフル代表チームの一員としてワールドカップへ参戦して参りました。今回の開催は韓国の昌原市(チャンウォン市)です。北京オリンピック後、最初のワールドカップになりロンドンへ向けてスタートを切る初戦として各国若手の選手を投入してきております。日本チームは相変わらずの顔ぶれで、大学生が一人もいない状況です。選考に対する批判ではありません。明らかに若手が育っていません。頑張れ大学生!


○4/8午前:出発

成田空港からJAL便で出発しました。成田→釜山間2時間程度。因みに京都→成田4時間程度・・・。近くて遠い国とはこのことです。機内では、昼食でチラシ寿司を食べ束の間の休息。

釜山空港到着で、現地はメチャ暑いです。到着初日から毎日夏日の陽気。ライフルの運搬や装備の搬入などでさらに暑い。韓国は花粉こそありませんが、空気が乾燥しているため目が乾いて辛い。日本の瀬戸内気候に近い天気です。でも、桜が綺麗に咲いていました。
上は、釜山空港近くに咲いていた桜です。


○4/8午後:ホテル到着

ホテルはチャンウォン市内総合運動場近くのホテルでした。買い物や食事をするのに便利で、立地条件は非常に良かったです。ワールドカップでは射場までシャトルバスが臨時運行され、監督選手に不自由のないよう配慮されています。とりあえず、初日は休息。
上は、部屋の様子。洗濯物が散乱していますが良い部屋です。


○4/9午前:【10mS60M PET】 ※PET:プリイベントトレーニン
日本では公開練習と呼ばれていますが、ワールドカップでは本戦前日に主催者側が射座や時間を指定しその中で練習を行います。
PETでは、多く発射することなく主にトリガーリング動作に集中し撃発しました。照準時、標的をしっかり捉えてトリガーリングできるよう意識することで、自分の射撃をコントロールしたいと考えています。私の感覚的な部分ですので深く言葉で説明できません。31発だけ撃発、短期集中してさっさと終わりました。調子は良かったです。


○4/9午後:銃検
銃検はISSFルールに基づき、一度検査をした銃器やジャケットは登録されるため、2度目以降の銃検の際は登録カードを見せるだけでOKです。ただし、銃器、ジャケットを変更した場合は登録のため検査を受ける必要があります。
今回のワールドカップでは、各国選手強化のため若手の参加が目立ちました。したがって、初参加の選手が多いので、銃検はいつも通り行列でした。


私は今回、エアーライフルをアンシュッツ9003からワルサーカーボンテックへ変更しましたので、銃器のみ検査を受けました。銃器の検査は5分程度ですが、ジャケットの検査になると2時間待ちくらいです。


○4/9夕刻:OPENING CEREMONY
開会式は、チャンウォンコンベンションセンターで夕方から催されました。素晴らしい開会式でした。開始から1時間30分はライブで(ちょっと長かった)、その後ビュッフェ方式で食べ放題。主催者側のおもてなしには感動しました。



○4/10午前:【10mS60M Qualification】 ※Qualification:本戦
エアーライフルは、国内でコンスタントに練習できていたので状態は悪くなかったです。泥臭く10点を取りに行ってでもファイナルに進みたいと思っていました。2シリーズ終了時点でTOP8以内だったらしいのですが、その後得点を伸ばすことができず21位でした。
1st 100
2nd 98
3rd 98
4th 98
5th 98
6th 98
Total 590
順位 21位
98ばっかり・・・。

点数的には平凡でしたが、以前の遠征と比べると格段に内容が充実していました。代表選手として戦う意識や何とかしてファイナルに進出したい意気込みが感じられましたし、今後ARでどういったトレーニングをすべきかアイデアが浮かびました。まあ、点数しか評価されませんから“mackyは不調だなぁ”って思われてるでしょう。思わせとけや!
上位は、中国、インドなどのアジア強豪国です。アジアの国の一員として、日本人の私もがんばれば彼らのようにワールドカップの表彰台に登れるのではないかと期待はできますが、現状で実力差は明らかです。彼らは、必ずしも綺麗な射撃をしているようには見えないのですが、10点に対する執着心みたいなオーラは日本人よりも感じられます。決定的な差はここだと思います。

上は、試合中の私の射撃姿勢。チームメイトが撮影してくれました。私だけではなく日本人の射撃姿勢は本当に綺麗だと思います。でも、姿勢だけではないんですね、きっと。


○4/11午前:【10mS40W 見学】
エアーライフル女子種目の見学です。この種目は、上位が混戦となるため、ルール改正後初の競射になるのではないかと妙な期待がありました。
案の定です。


395点で3人が並び、3分の2のファイナル進出を掛けて5発勝負。
見てたらファイナル出る前に果ててしまいそうな緊張感です。逆に、ファイナルの予行練習になって良いのかも・・・。撃った選手にしかわからない重圧でしょう。
左から、中国、日本、アメリカの選手。結果は、“中国人強いっす”。
※ルール改正:8位9位をまたいで同点の場合は競射を5発行い、Final進出者を決定する。


○4/11午後:【50mP60M PET】
気を取り直して、50m種目にトライです。
風の状況を把握したかったのですが、思ったより難易度が高く、この日の練習でちょっと嫌なイメージを残してしまいました。風旗を読み取れません。はっきり言って当らなかった。明らかに風に流されたグルーピングができあがっているのに、自分が理解できていない状況があり、終始混乱していました。


○4/12午前:【50mP60M Qualification】
そのまま、本戦へ突入です。不安に包まれたまま試合当日を迎えました。
風がないのに外してる・・・。我慢しながら1シリーズを終えましたが、2シリーズ目は我慢できず95点。スリングの張り方に違和感があり、我慢するのか思い切って姿勢を作り直すのかを考え、我慢して粘ることを選択しました。しかし、その後もダラダラとロースコアのシリーズが続き、合計点は国内での試合より大幅に低く試合を終えました。
1st 99
2nd 95
3rd 97
4th 98
5th 97
6th 98
Total 584
順位 40位
射撃場の特性で得点が低下してしまうことは絶対にあってはならないことです。風が吹こうが雪が降ろうが雷が落ちようがどんな状況であっても撃てるのが代表選手だと思います。もう若手ではないので、こんな失敗を繰り返してしまうようであればワールドカップには連れて行ってもらえないでしょう。実戦を想定した練習メニュ−を考えてトレーニングを行わなければなりません。
その夜・・・。
ライフル男子で反省会。

サムギョプサルをお腹一杯食べました。

※風の影響で外したと表現していますが、私が伝えたいのは“風の状況を理解できない私が未熟である”ということです。風が吹いたら点数を落としても仕方がないとは一切考えておりませんので、間違いなきよう付け加えさせていただきます。


○4/12午後:【AP60M Final見学】
本戦で、世界記録が出ました。594点。韓国のJIN選手が撃ちました。本戦も見学していましたがセンター的中率とセンターの深さが半端なかったです。Final合計でも世界記録が期待されましたが、標的トラブルが発生し大きく点数を落とす結果になりました。電子標的のロールが回転していなかったため、点数が適切に表示されなく、韓国チームのコーチが気づいたときに抗議されましたがすでに6〜7発撃ってしまっていたため、それまでの点数は採用となり残りを予備的で撃つことになりました。標的に対する責任順位は、①射手②コーチ③主催者④標的/交換機メーカーなので、仕方ないことになっちゃいます。ルール上ですけどね。撃たれたロールは、綺麗なセンターのグルーピング(ライフルで撃ったみたい)がありましたが、点数は8.0とか9.4とか・・・。JIN選手、かなり動揺と苛立ちが見られましたがすごい精神力で我慢していました。仕切り直し後、9発終えた時点で、2位と0.9点差。10発目、7.9点を撃ち2位に転落してしまいました。最後の一発は完全に外したと思いますが、それまでの集中力や存在感は際立っていました。2位になっても、JIN選手のための試合だったと思います。こういう選手をスターと呼ぶのかもしれません。


○4/13午前:【50m3×40M OfficialTraining】
※OfficialTraining:公式練習
“何とかしなければならない”と意気込んで公式練習です。 このままでは終われない危機感が出てきました。遅いかもしれません。エアーやプローンも必死でいたが、これから先はもっと必死でしたので写真は全然撮っていません。
P、S、K共に自分の形というのをしっかり認識して、勇気を持って撃ち込もうと決めていました。とはいうものの、やれることは限られているのでひたすらに呼吸とトリガーリングのタイミングを合わせることに注力しました。


○4/14午前:【50m3×40M PET】
前日と同じように、呼吸とトリガーリングだけに集中しました。しかし、この日はまた風が強い日となりました。なかなか日本国内では経験のない風の吹き方と強さなので、トレーニングの一環としても考えて練習しました。風旗と顔に当る風の感覚で何となく撃発のタイミングがわかったつもりです。風のことばかり書いていますが、PETでは『銃が正常に動作すること』『自分の意志で撃発をコントロールすること』ができれば、OKレベルと考えています。


○4/15午前:【50m3×40M Qualification】
この日は無風でしたが、思ったような射撃はできませんでした。
Prone 1st 99
2nd 98
3rd 97
4th 99 total 393
Standing 1st 89
2nd 94
3rd 98
4th 92 total 373
kneeling 1st 95
2nd 92
3rd 95
4th 95 total 377
順位      25位      P+S+K=1143

・Prone
P60競技での課題は大幅に修正したつもりですが、点数が伸びていないのでできてないのかもしれません。スリングの張り方の違和感は少なくなり、反動も改善されました。

・Standing
序盤で慎重になりすぎて失点を多くしてしまいました。その後、立て直しましたが最終シリーズまで良い状態が維持できませんでした。この姿勢は良いときと悪いときの差が激しく、安定して高得点を出すことができず非常に苦労しています。トレーニングで実戦を踏まえたメニューを加えて鍛え直したいと思います。

・Kneeling
試射で良い状態を作れましたが、本射に入った際に狙いこみすぎで点数が伸びなかったのだと思います。途中、立て直しましたが微妙なところで9点が連発し、国内での試合以上に苦戦を強いられました。

・総合
3姿勢競技は、3種目の組み合わせで勝敗を決する競技です。3種目をそれぞれベストパフォーマンスで臨めば、高得点は計算できますがなかなか難しいものです。今回は、3種目とも低調で終わりましたが諦めずに練習を続けて強い射撃を作れるようがんばりたいと思います。(既にがんばってますが・・・)


○4/15夕刻:【チャンウォン最後の晩餐】
最後もサムギョプサルで〆です。
キムチも焼くそうです。意外とうまかったですよ。


○まとめ
このようなワールドカップという重要な試合に調子を合わせて調整するのは難しいことです。しかし、これをやらない限り世界でメダルを獲得するのは不可能です。今年、私が参加できるワールドカップはこの試合のみです。来年度以降またチャンスを掴んで挑戦したいと思いますが、“重要な試合に調子を合わせる” という課題をクリアーする術を身に着けて、当面はファイナル進出を目指して頑張りたいと思います。
この文章をご覧いただいた皆様も良い射撃ができるよう心から願っております。


○4/18午後:【ワールドカップ帰国後滋賀県ライフル射撃場にて】
撃つしかないですから、帰国しても練習です。